消防と空調の事前チェックが重要
ビルの最上階にオーナー様の住戸がある物件のリノベーションパターンについて解説します。
主にそのまま住戸としてリノベしたり、賃貸用に世帯を分けたりするケースもあります。
今回はオフィスとして用途変更するリノベーションについて解説します。
オフィスとして用途変更する工事の流れとしては主に下記があります。
・消防署への申請
・解体工事
・給排水工事
・電気工事
・空調工事
・軽天工事
・大工工事
・OAフロア敷き
気をつけたいのは消防署への申請と空調工事です。
消防署への申請は非難誘導灯や警報機の設置箇所や台数を事前に消防署のアドバイスに基づき決めておき、図面等の書類を提出します。
後からの申請は基本的に認められず、工事前に申請が必要です。万が一消防署への申請を忘れて工事を進めてしまった場合に消防検査の際に指摘が入りますので工事を大幅にやり直す可能性が出てくるので注意しましょう。
また、空調工事については電気の容量に関して事前に調査が必要です。
一般的な住戸用の電力アンペア数しかない場合に、オフィス用の天井付けの大きなエアコンを動かす事ができない可能性があるからです。
エレベーターがあるビルであれば動力電源という別電源が来ているのでその電源でエアコンを動かす事もできる可能性が高いですが、来ていない場合は動力電源が無い可能性もあります。
そういった場合、広いオフィスでは空調が不足してオフィスとしての機能が弱くなりますので、状況によっては建物室外から電源を引き直すか、大きなフロアであれば二つに分けて貸す等のプランニングが必要になります。
【解体工事について】
解体工事についてはオーナー住戸自体が広く作られているケースが多いため解体量は多くなる傾向にあります。また最上階にあるケースが多いため解体材の搬出時にエレベーターの往来が最上階から1階へと往復するため事前に入居テナントに説明しておくことが必要です。
【給排水工事】
給排水工事については住戸と比較して浴室が無いためシンプルな作りになります。ただし、トイレを男女別に分ける等のオフィス特有の給排水設備も必要となってきますのでその点は入居テナントの利便性も考慮して事前にプランニングが必要です。
【電気工事】【空調工事】
電気工事は住戸と同様に工事開始時に先行配線を行い、壁が立ち上がった段階で配線を壁裏に落とします。また、空調工事に関しては排気のダクト工事や先述した電気の容量に基づいた天井付けのエアコンを先に設置します。
エアコンを先に設置する理由は後工程の軽天工事に際して天井の開口作業の手間を省くためです。
【軽天工事】
オフィス物件の場合、垂木(たるき)という木での壁や天井の下地工事をするケースはあまりなく、軽鉄という金属部材を使った工事で壁や天井を作ります。この工事を軽天工事といいます。
軽天工事のメリットは工期が早い点にあります。軽鉄を同じ間隔で壁に並べて設置します。その後に石膏ボードをはります。また天井も軽鉄を組みます。天井に関してはジプトンボードを貼ります。
最近では天井は敢えて何も組まずに剥き出しのままとする、「躯体現し(くたいあらわし)」という工法を使うケースも多くあります。いわゆる「天井むき出し」と言われるデザインです。
【大工工事】
軽天工事でどうしても収まらない工事箇所のみ大工さんが来て工事を進めます。軽天工事では細かい箇所の工事が難しいケースもあるため部分的に大工さんが来て大工工事で納めるケースもあります。
【OAフロア工事】
オフィスにおいては一般的な住戸で使用される「置床工法」という足の着いた下地材を使用して床を組むケースはあまりなく、OAフロアというフロア材を使用します。
OAフロアは床下に空洞があり、その空洞にLANケーブルや電源ケーブルを通す事ができるため、オフィスのレイアウトごとに床上に配線が出てこないで電源やLAN工事が出来ます。
なお、LANケーブルの配線に関してはこの段階の工事では実施せずにテナントがついた際にテナント側の工事として実施するのが一般的です。
非常にザックリと説明すると以上のような流れになります。
ここで、最近当社で施工したオフィスへの用途変更工事の実例をご紹介します。
こちらはビルオーナーの非常に広い住戸でしたが、ワンフロアのオフィスに用途変更しました。
電力は動力電源が来ていたため問題なく天井カセット式のエアコン3台を設置できました。床下もOAフロアを設置しました。こちらはすぐにテナントが着き、テナント側の内装工事も近々に当社にて施工する予定です。